だから池月第9号

池月誕生秘話~蔵元と共に歩む~その参


〇毎年一回の勉強会

確認と発見の連続

 年末の季節限定品「池月うすにごり」は、蔵元を伝えたい酒屋と日本酒好きのお客様との思いが合致して、初年度約5千本の「池月うすにごり」を届けることができた。蔵元にとっても酒屋にとっても夢のような数字だった。

 川合社長は「酒屋さんたちの努力には頭が下がると同時に、何よりお客様に感謝しています」と、妥協のない酒造りに拍車がかかる。

 この結果を経て、翌年の平成10年1月から蔵元と酒屋の交流は自然と勉強会という形で行われるようになる。毎年一回の割合で集まるようになり、今もなお変わらず続けられている。

 西本さんは「蔵元さんや酒屋仲間に会うことが何よりの元気のもとであり、そこで話し合われることは”確認と発見の連続”で勉強になります」といい、また「谷澤さんはとても厳しい人ですが、われわれ酒屋が忘れがちな気付きを与えてくれます」と、常に原点を見失わないようアドバイスしてくれるという。

〇尽きないテーマ

利を分け合う関係

 勉強会では様々な話し合いが行われる。「池月」発信の各種チラシやポスター、情報誌作成をはじめ、店舗診断やレイアウト、イベント企画(秋の宴、蔵元見学)、新商品開発や試飲会、酒類業界の動向、各店の現状報告や悩み・相談事に至るまでテーマは尽きない。

 加えて、蔵元からは毎酒造期の製造計画や造りの経過報告、酒の出来栄えなど酒造り全般と販売状況が伝えられる。 

 また、出来るだけ家族や仕事上の負担を減らすため、会合は夜9時から話が尽きないときは日付が変わることもしばしばだ。森酒舗の森繁則さんは「同業者でありながらも、各人が率先して経験した話を包み隠さず提供してくれます。『みんなでよくなろう』という気持ちがあって力をもらっています」と、ともに利を分け合う関係性が成り立っている。

〇頼もしい川合社長

家業が生きる一つの道

 蔵元と酒屋が共に歩む第一点は、”お客様に池月の美味しさや楽しさ、安心を届け続けていくこと”であり、加えて、両社が共生できることを目的としている。だからこそ、信頼関係はとても大事な要素であり、その関係性を守っていくためのルールは必然と生まれる。

 それは①メーカー希望小売価格の順守②協調性ある販売店の選択は、欠かせない条件だった。ゆえに、どこにでもある商品になりえない理由はここにある。

 現状、酒類販売免許の規制緩和による流通の自由化でプレミアム販売も安売りを止めることはできない。当然のことだが。しかし、価値の視点は他にもある・・・。「流通がリードする昨今、小さな家業の生きる道はそんなに多くないと思います。私は理解ある酒屋さんと共に歩みたい。蔵元には品質も価格もお客様に届くまで責任はありますからね。だからこそ、酒屋さんはなくてはならない存在です」と話す。頼もしい川合社長の存在が”私たちの池月ブランド”を守っている。企業家・組織化が重んじられる昨今にあって、どんな業種においても、このような家業が生き残れる環境は今の日本には大切なように思う。