だから池月

池月を縁の下で支える

 今回は、前回の川合社長に続きまして、蔵元の中枢的存在の田中専務に蔵元における夏場の仕事をお伺いしました。

田中 博史 氏  鳥屋酒造専務


■夏場の蔵仕事■

 「瓶詰め作業や配送などの日々の仕事のほかに、気温が温かくなる5月初めまでに吟醸酒の火当てが夏場一番の大仕事となります。

 吟醸酒の火当てとは、65度に温めた管へお酒を通す作業です。気温の高い夏場、酒の熟成を穏やかにすることと、雑菌消毒も兼ねています。大きなタンクなので、温度計とにらめっこしながら調整しています。器具の消毒に半日、火当てにも時間もかかりますので、大吟、純米大吟、みなもにうかぶ月の火当てに10日間ぐらいですが、午前3時頃より作業を始めたりもします。

 5月下旬になりますと土曜粕の手入れを行います。700リットルのタンクに酒粕を入れて保管しているのですが、その酒粕を上下に掻き混ぜたり、空気抜きの作業が、結構な力仕事で、とても大変なんですよ。出来上がった酒粕はほとんど漬け物業者に販売しています。

 6月からは仕込み蔵の掃除や機械の点検など行います。搾り機、洗米機、放冷機(タンクに蒸米を送る機械)を始め、ポンプ、ボイラー、チラーなども、出来る範囲でバラバラにし、メンテナンスや錆取りなどを行っています。

 その他、蔵人たちが休む布団を干し、蔵の掃除をすることで、蔵人が酒造りにしっかり取り組められる様にしています」

■お酒は我が子同様■

 「ご存じの通り、お酒は仕上がるまで様々な工程を一つ一つ手にかけて造られますが、お酒の出来の良し悪しを含めて、皆かわいいものですよ。

 どの酒もお客様に喜んでもらえるよう、ただただ祈るような気持ちです。」

■好きなお酒は■

 「私自身は、池月の普通酒のぬる燗が好きです。呑んでほっとしますし、酒って感じでしょ。凄く暑い日、ぬる燗に氷を1個入れて飲むと美味しいですよ。疲れた時にも、おすすめです」

■最も大切な日は■

 「やはり、初仕込みが搾りにかかる日じゃないでしょうか。槽(やぶた)の口から流れ出す黄金色の酒を皆で覗き込みます。この日は、やっぱり朝からソワソワしますね。」

■座右の銘は■

 「太それたものは持ち合わせませんが、子供のころ、父親から『気は長く心は丸く己は小さく他人は大きく』を日々、心がけています。なかなか実践できていませんね。…(笑)」

私と池月   中村 光 氏

「らくちんや」

金沢市神宮寺2の7の25第一伊藤ビル1階         (平成13年11月6日開店)

 今回は、「らくちんや」店主の中村光氏に、お話を伺いました。


■池月との出会い■

 「12年前、現在の店舗を開業するにあたり、鳥屋酒造に行きました。その時の感想は、気取らない感じがとても気に入りました。

 またコツコツ酒を造っている感が伝わり、手造りでやっているというのが印象に残っています。」

■池月でのイチオシ■

 自分では、みなもにうかぶ月が一番の好みなので、お客様にもイチオシとしてすすめさせていただいていただいております。あと、普通酒のぬるめの感も好きです。

■池月に合う料理■

 「不思議と、当店のどんな料理にもあっていますね。池月は名脇役だと思います。料理も手作り、酒も手造り、当店のこだわりです」

■お店には池月だけ■

 「当初は池月が売れなかったら、どうしようと思うこともありましたけど。むしろ今まで池月をやってきて、都合が悪いと感じたことはありません。お客様には、これはいい酒だからと言って、すすめてきました。疑心暗鬼の中、お客様からも美味しいとのお声が多く、好印象でした。

 少しずつですが池月のファンが増えていくのを感じました。また、うすにごりやみなもあらばしりの限定酒も、お客様には好感触で、そのうちお客様から、『この店の店名は、池月かと思った!』と言われたこともありました(笑)。能登の方は池月をご存知なので、池月を目当てに入店していただいたこともありました。

 そんな方々に支えられながら、当店から池月を発信するぞ!という思いでやってきた、あっという間の12年間です」

■今後の池月に期待することは■

 「今のままでいいです。手造りだからこそ味わえる、その年の味わいを楽しみに待ってます」

日本酒豆知識②

 江戸時代初期までの日本酒は、年間を通して数回、必要に応じて仕込まれていました。それを気温の低い冬場に限って、1年分を仕込む方法を「寒造り」「寒仕込み」と言います。

 1673年に徳川幕府がこの寒造りを推奨して以来、現在も多くの蔵元がこの形となっています。冬に一括して仕込むことで、季節労働としての杜氏集団を生むきっかけともなりました。

 今の寒造りは、新米が出回る10月から翌3月頃にかけて行われます。冬場に仕込んだ日本酒をタンクなどで貯蔵・保管し、その都度、瓶詰め・出荷をしています。

 毎年、夏ごろになると、冬に仕込んだ新酒の状態を確かめるための、「初呑み」「呑み切り」という行事が行われます。お酒の味わいの進み具合、今後の貯蔵方法や出荷時期などを、決定していきます。

 我らが、「池月」の醸造元鳥屋酒造でも、7月の初めには無事、この「呑み切り」を済ませました。国税局の鑑定官からも、有難いアドバイスなどを頂いたそうです。もちろん、気になるお酒の評価もいい結果だったそうで、今後もますます「池月」から目が離せなくなりそうです。