去る10月12日、池月特約店のおさけやさん西本が主催する「秋の宴」が、金沢の名店の一角をリードする「いたる香林坊」の二階で盛大に行われた。参加者は、「池月」ファンはもちろん、おさけやさん西本ファンで席を埋め尽くした。夜7時スタートを前にして続々と人が集まってくる。「イヤー久しぶり」「元気しとったね」「また来ちゃいました」など、誰ともなしに言葉が行き交い、まるで同窓会で仲間に会ったかのような雰囲気だ。そのまま笑顔に満ちた光景は、これから始まる「宴の楽しさ」を物語っていた。
今回は、特別ゲストとして今年4月をもって勇退された柳矢健清氏(杜氏)を招き、これまでの労をねぎらうとともに、感謝を伝えたいという西本さんの思いにみんなのテンションは急上昇。
「心から伝えたい酒に出会えた喜び」・・・これは西本さん夫婦の口癖だ。それが「池月」であり、川合社長、柳矢杜氏との出会いという。一方、柳矢杜氏は「酒屋さんなしでは池月は語れない」と感謝の気持ちを忘れない。この両者の思いはみんなの思いでもある。柳矢氏は、今日この時を「男冥利に花が咲いた」と、隣席の私に耳打ちをした。皆さんという花に感謝したいと理解できた。
宴半ばにさしかかったところ、次々と柳矢氏に吸い寄せられるかのように人が囲み、思い思いに語り合い盃を交わす。中には涙する人もあった。抱き合う人もあった。握った手を離さない人もあった。「いたる」の石黒社長と柳矢氏との献盃では最高潮の盛り上がりを見せた。おのおのが「池月」への思いを楽しんでいた。
29歳から76歳までの半世紀近くにわたる酒造り。そこで酒造りの奥深さにロマンを感じ一途に造り続けてきた柳矢氏の心中から自然に出た言葉「男冥利に花が咲いた」は、まさしく人生悔いなしを語ったものだろう。
今回の「秋の宴」は、池月ブランドを立ち上げた当初の”約束事”である蔵元・酒ゃ・お客様の三位一体を如実に表したお手本であり、酒を通じて人とのつながりを尊重したものだ。地元で愛されない酒は必ずや足元をすくわれる。人とのつながりという小さな点を、口コミという広がりをもって面にする強みこそが、小さな蔵元や町の酒屋の存在意義を高める。「池月」は、顔の見える酒として挑戦しているといっても過言でもない。
だが、現状の「池月」は決して順風満帆ではない。逆に、存続の危機から脱していないといった方がいいのかもしれない。そこで、北陸地区の特約店たちが集まりと共に共生するために「池月」への取り組みや打開策を話し合った。
初志貫徹----。
今一度、原点に立ち寄り「池月」への取り組みを見直そうと、さらに酒屋の連携を高め合うことを決めた。この行為には、日本酒が長年にわたり地域で受け継がれてきた”本質”があり、継承してきた裏付けが隠されている。現代においては不器用という人が少なくないだろうが、ぶれない「池月」だからこそ、一人一人が理解し行動すれば必ずや実を結ぶと信じている。唯一無二な蔵元かもしれないが、応援し甲斐のある蔵元ということだけは””約束”する。
(谷澤)
(通称 大ちゃん) 地酒・そば 集(しゅう)
富山市桜町2-4-1 MELビル1F 創業2011年3月
純米酒、みなもにうかぶ月、うすにごりを中心に全アイテムを取り扱っています。特に、純米酒は定番メニューとさせていただいています。店名に地酒をうたっているように、全国から常備40種類はあります。その中でも池月は人気の銘柄になってきています。
すっきりと飲みやすく料理を活かしくれるお酒だと思います。それと、一番は酒質に”変をわらぬ安定感”があって安心してお客様に勧められますから、何よりですね。いろんなお酒を呑まれた後「池月」に戻ってくるような、そんな印象があります。
比較的に若くて20歳代から40歳代が中心です。また駅近くという場所柄から、平日はOLやサラリーマンが多く、週末は女性客が7割を超えます。
当店はお客様の声をもとに工夫を凝らした料理やお酒を提供しています。特に、若い女性や日本酒の若手な方には、日本酒カクテルやアレンジしたものを提供し好評を博しています。うすにごりをぬる燗や燗酒にして出したりもしています。お燗はコメの甘みと口当たりに柔らかさが増しますし、何より身体に優しいことから女性に人気です。また、お燗した純米酒の骨酒(岩魚、鮎など)は珍しさもあって人気の一品です。
私自身、日本酒が大好きで多くの方に日本酒の良さを伝えたい思いがあります。日本酒も時代(いま)に合った飲み方があると思いますし、次代につなげなければ寂しいし勿体ないです。
純米酒はどんな料理にも相性はいいですが、うちでは蕎麦(地元・八尾産)が一番ですね。
うすにごりは梅水晶というサメの軟骨・鶏の軟骨・紀州梅の和え物でしょうか。
吟醸酒のみなもにうかぶ月は控えめな香りと旨みから魚料理全般に合うと思います。
低糖白の純米酒を飲んでみたいですね。ボディのある「池月」も魅力的だと思います。
酒造りも本番を迎えて、各蔵元では今年初めての新酒が勢いよく搾られています。われらの「池月」は11月1日に全スタッフが蔵入り、6月の初洗い、23日の初添え仕込みを経て12月中ごろ上槽の予定で新酒「うすにごり」の仕込みが行われています。
今年は、長年にわたり「池月」を育んできた柳矢杜氏が勇退され、新杜氏の川井杜氏を中心に麹屋・敞田さん、頭・新出さん、釜屋・坂井さん、そして大西さんのメンバーで「新池月」が誕生する。
川井杜氏は「一足早く10月から蔵入りし、今期の酒造りの準備をしました。柳矢杜氏さんの記録されたデータやメモを夢中で確認していますが、時間が足りないですね。まず現状維持で「池月」の味を守っていくこと。そして、お客様の喜ぶ顔が見られる酒を造っていきたい。と、気合十分だ。
うすにごりは、協会1401酵母、通称・金沢酵母に精米歩合60%の五百万石(麹米)を使用。今年の酒米は、夏場の高温による品質低下が懸念される中、川井杜氏は「手間ひまかけた分だけ酒は応えてくれます。醪一本一本とたいわしながら向き合っていきます。」と、柳矢流を貫くという。
川井杜氏は「プレッシャーを造り買いに変えて頑張ります。」と笑顔で話す。これまで同様に、今年のうすにごりは本当に楽しみであり多くの方に楽しんでもらえる酒になると確信しています。